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「ビッグバウンス」宇宙 とは?

今回は、量子力学が予言する「ビッグバウンス」宇宙について述べることにする。
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私たちの宇宙の始まりはビッグバンではなく「ビッグバウンス」だったかもしれない。
 それはエキゾチックな量子重力効果による宇宙の爆縮と爆発である。

 今までに何度も「ループ量子重力理論」の考察の中で述べていることたが、時間と空間に関する物理学者の間には、その時間と空間の関係は、ある微細構造からなっていることを示唆している。物質原子が化学的組成の最小単位であるように、長さの最小単位である“空間の原子”が存在するのである。

 それ以上小さくは分割できない空間の原子の大きさはおよそ10^-35mと考えられ、10^-18mもの微小距離を解像できる今日の最新鋭の機器をもってしても検出できない。そのため、多くの科学者はそうした基本単位が集まってできた時空というようなものを科学的な概念として受け止めてよいのかについてすら懐疑的である。その一方で、一部の研究者たちはこうした態度に屈することなく、時空の原子を間接的に検出する方法を編み出しつつある。

 最も有効なのは、宇宙を見てみることである。膨張している私たちの宇宙を、時問を遡りながら観察してみよう。すると、すべての銀河はある微小な1点「ビッグバン特異点」に向けて収縮していく。現代の重力理論(アインシュタインの一般相対性理論)によれば、その点で宇宙は無限大の密度と温度を持っていた。この瞬間が、宇宙の始まりだとか、時間・空間と物質の創生の時だと考えられることが多い。しかし、無限大の量が現れた時点で一般相対性理論そのものが破綻するため、こうした解釈は行き過ぎている。

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左図:空間の原子
 相対性理論が破綻するのは、空間が連続的だと仮定したためである。ループ量子重力理論などのより洗練された理論では、空間は小さな“原子”(図の球)の格子でできていると考える。その原子の直径はいわゆるプランク長(重力の効果と量子効果の強さが等しくなる距離)程度である。
右図:一般相対性理論の破綻
 ビッグバンは、銀河が互いに遠ざかっているという観測事実に基づいた帰結である。時間を逆行させると、すべての銀河(あるいはそのさきがけとなるもの)は、137億年前にある1点に潰れてしまうことになる。事実、アインシュタインの一般相対性理論によれば、時間を遡ると宇宙は密度が無限大のビッグバン特異点へと収縮することが予言される。しかし、密度が無限大になるようなことは非現実的であって、むしろ理論が不完全だということを示す。

 ビッグバンの瞬間に何が起こったのかを説明するには、相対性理論を超えた物理理論が必要となる。重力の量子論(量子重力理論)を構築して、相対性理論では捉えられない時空の微視的構造を扱えるようにしなければならないのである。

 時空の微細構造は宇宙初期の高密度環境で重要になるが、その痕跡が現在の宇宙に存在する物質や光の放射場の分布に残っている可能性がある。時空の原子が実在するならば、物質原子の場合とは違って、その証拠を見つけるまで何百年もかかることはないだろう。
運が良ければ、今後10年ほどでその手掛かりが得られるかもしれない。

 物理学者たちはさまざまな量子重力理論の候補を考案してきた。そのそれぞれで、量子論の原理は異なった方法で重力理論に適用されている。その候補の1つ「ループ量子重力理論」に関するものである。この理論は1990年代に作られ、次の2つの段階を経て構築された。

 まず、一般相対性理論が古典電磁気学の理論に似た数学的形式に再定式化された。理論の名前にある「ループ」とは、この定式化における電気力線・磁力線に対応するもののことを指している。次に、量子論の原理が、結び目の数学理論に関係した革新的な方法で、そのループに適用された。こうしてできた量子重力理論は、時空の原子の存在を予言する。

 弦理論(ひも理論〕や、いわゆる因果的動的単体分割といった他のアプローチでは、時空の原子そのものの存在が予言されるわけではないものの、やはり十分に小さな距離が分割できないことが示唆されている。

 例えば、弦理論は素粒子の相互作用と弱い重力を統一的視点から記述するのに適している。これに対して、重力が非常に強くなる特異点で起こる現象を解明するには、ループ量子重力理論における時空の原子の概念を使う方が適しているのである。

 重力理論の重要な帰結の1つとして、時空が流体の性質を示すことが挙げられる。アインシュタインの深い洞察から、時空は宇宙のドラマが繰り広げられる単なるステージではなく、それ自身が役者の1人であることがわかっている。時空は、宇宙に存在する物体の運動を決めるだけでなく、それ自身が時間発展する。この宇宙では物質と時空が複雑に相互作用しており、結果として空間は伸び縮みしているのである。

 この考え方は、ループ量子重力理論によって量子論の領域へと拡張される。物質原子に関する私たちの知識を時空の原子に適用することで、基本的概念の数々を統一的視点から見渡せるようになる。

 例えば量子電磁力学の理論が記述する真空は光子などの粒子が存在しない状態で、この真空にエネルギーが注入されると、粒子が新しく生成される。これに対応する量子重力理論の“真空”は、時空が存在しない、想像もつかないような無の状態である。ループ量子重力理論は、この真空にエネルギーが注入されたときに時空の原子がどう生成されるかを記述する。

 膨大な数の時空の原子は、変動する格子をなす。大きなスケールでこの格子を見れば、それは古典的な一般相対性理論に従う時空と同じ振る舞いを見せる。格子間隔が非常に小さいため、格子というよりも連続したもののように見える。したがって、通常は私たちが時空の原子の存在に気づくことはない。しかし、ビッグバンの時期のように時空にエネルギーがいっぱいに詰め込まれた場合、時空の微細構造が重要な役割を果たすようになり、結果としてループ量子重力理論は相対性理論と異なる予言をもたらすことになる。

 ループ量子重力理論を私たちの宇宙に直接適用するのは非常に難しい。宇宙の大きさなどの本質的な特徴だけに注目し、他の細部を無視するといった単純化を行い、また、物理や宇宙論のための標準的な数学道具を、このループ量子重力理論に見合った形に作り替える作業も必要である。

 例えば、通常の理論では、物理現象は微分方程式で記述される。この方程式により、連続体としての時空の各点において物理量(密度など)の時間変化が与えられる。しかし、時空が粒状である場合、有限の間隔で並んだ点の上で物理量の振る舞いを記述するには、微分方程式ではなく差分方程式を用いなければならない。この方程式で、例えば宇宙の大きさがどのような刻み幅で変化していくかが決まる。

 ペンシルベニア州立大のM.ボジョワルドが、1999年にループ量子重力理論の宇宙論的な意味を分析し始めた当時、この差分方程式はそれまでに得られていた結果を再現するだけだろうとほとんどの研究者が考えていた。しかし、間もなく予期せぬ結果が得られた。
 通常、重力は引力である。物質でできた天休は自身の重さで潰れる傾向にあるし、もしその質量が十分に大きければ、重力が他のあらゆる力に打ち勝って、その天体をブラックホールの中心にあるような特異点へと変えてしまう。しかし、ループ量子重力理論によると、時空の原子的構造が原因で、非常に高密度の状況では重力は斥力に変化すると考えられる。

 時空をスポンジに、物質とエネルギーを水にたとえてみよう。多孔性のスポンジは水を吸収するが、たかだか有限の量しか蓄えることができない。完全に水が溜まってしまえば、水はスポンジに吸収されることなくはじき返されるだろう。同様に、原子的構造を持つ量子的な時空は多孔質であり、有限の量のエネルギーしか蓄えることができない。エネルギー密度が非常に大きくなると、斥力が発生しだすのである。一方、一般相対性理論における連続的な空間は、無限の量のエネルギーを蓄えることができる。

 この量子重力効果のため、特異点(密度が無限大となる状態)は発生しない。このモデルでは、初期宇宙における物質の密度は、例えば数兆個の太陽が陽子1個のサイズにぎゆっと詰まったような、非常に大きいが有限の値である。こうした極限的な状況では、重力は斥力として働いて、空間を膨張させる。膨張に伴って密度が下がると、重力は私たちになじみ深い引力として働くようになる。その後、慣性によって宇宙の膨張は今日に至るまで続くのである。

 実は、この反発的重力は空間を加速的に膨張させる。そのような加速膨張期(インフレーション)が初期宇宙に存在したことが、観測結果から示唆されている。宇宙が膨張するにつれてインフレーションを駆動する力は弱まる。そしてインフレーションが終わると、余ったエネルギーが通常の物質へと伝わって宇宙を満たす「再加熱」と呼ばれる現象が起こる。

 現在の宇宙モデルでは、インフレーションは観測事実を説明するために場当たり的に導入された理論である。しかし、ループ量子宇宙論では、このインフレーションが時空の原子的構造から自然に生じる。宇宙が小さく、スポンジ的な性質が顕著な時期には、加速膨張が自発的に起こるのである。

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図:反発する時空の原子
 空間のある体積にエネルギーを詰め込んでいくと、そのエネルギーを担う粒子の波長は短くなっていき、やがて時空の原子の大きさに近づく(上図)。
 すると空間には、その名に反してエネルギーを詰め込むためのスペースがなくなる。さらに多くの工ネルギーを詰め込もうとすると、空間はそれを押し返してしまうだろう。このとき、その領域から生じる重力は、引力から斥力に変化したように見える(下図)。
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