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相対論の破れを観測せよ !

 相対性理論も決して“絶対的”なものではない!?
侵すべからざる原理と考えられたアインシュタインの理論に現代物理学が挑戦を始めた。相対論の破れから、万物を説明する「究極理論」の手がかりが得られるはずである。

 偉大なるアインシュタインの姿は、すべての物理学者にとって非常に魅力的な目標である。アインシュタイン自身も、彼の理論を超えようとする研究者たちの努力を温かい目で見守っているだろう。

 ここ二回ほど、リー・スモーリンの著書「迷走する物理学」を中心に記述してきました。
しかし、今回は「アインシュタイン」という20世紀最大の天才に対して記述します。

  アインシュタインの偉業を偶像視せず--それを打ち破ろうとしているのは--多くの有能な研究者たちが真剣にアインシュタインを超えようと努力している。そして、アインシュタインがガリレオやニユートンを超えたように、知の挑戦を続けている。

 素粒子物理学の方程式に、相対論を破るような項として考えられるものをすべて付け加えたのが拡張標準モデルである。極めて包括的なモデルで、 究極の統一理論(これは未完成)が扱うような高エネルギーの世界に起因する物理現象が日常的な物理学の世界にその姿を見せ、そこに既存の理論では説明できないわずかなくいちがいが現れても、すべてをカバーできる枠組みとなっている。
 相対性理論にはほころびがある可能性があり、いくつかの考え方が特に注目を集めている。ローマ大学のアメリノ=カメリア が2000年に提唱し、ペリメター理論物理学研究所のスモーリンやロンドン大学のマゲイジョらが研究している「二重特殊相対性理論」もその1つである。

 前回紹介した、二重特殊相対論はループ量子重力理論をはじめとする量子重力理論の影響を受けて生まれた。従来の特殊相対論では真空中の光速度Cという速度の壁があるが、二重特殊相対論ではさらに第2の“速度限界“があると考える。
 これは非常に短い距離では時空が滑らかな連続体ではなくなり、砂粒のような離散的なものになるという考え方が基礎になっている。量子物理学では、距離や時間が短いほど運動量やエネルギーが大きいことに相当する。だから、粒子が十分に高いエネルギー(プランクエネルギーと呼ばれる)に達すると、その粒子には時空の粒子性が“見える”ようになるはずである。
 とすると、どんなに小さなスケールで見ても時空は連続だという前提に立つ相対性理論は破れる。これを反映して、二重特殊相対性理論では、粒子を光速C以上に加速できないのと同様に、粒子がプランクエネルギーを超えて加速されることもあリえないと考える。
こうした理論の中には、非常に振動数の高い光は振動数が低い光よりも高速で進むと予言するモデルもある。そして前回紹介したように、遠い宇宙で起きたガンマ線バーストという爆発の光を観測して、光の速度の違いを探る実験が進んでいる。

 しかし、一方ではこれら新理論がきちんとした基盤の上に立っているのかどうか、懐疑的な見方もある。一部の研究者は、新理論の方程式は物理的には従来の相対論の方程式と実は同等であって、単に方程式が複雑になっているせいで、それがわかリにくくなっているだけだと主張する。実際のところは、弦理論やループ量子重力理論など、より基礎的な理論による厳密な検証を待たねばならないだろう。もちろん、実験的な証拠が得られればそれに越したことはない。

 このほか相対論の破れとして考えられているものに、光速Cそのものが長い宇宙の歴史の中で変化してきたという考え方がある。トロント大学のモファットは1990年代初めにこの種のモデルを研究していたし、最近ではマゲイジョがこのアイデアを支持している。
 もしビッグバン直後の宇宙で光速Cが現在よりもずっと大きかったなら、ある種の効果は非常な高速で伝わったとみられ、そう考えるといくつかの宇宙論の謎が解ける可能性がある。

 また、もし光速Cが変化するなら、それに伴って微細構造定数α(電磁気力の相互作用の強さに関する無次元の数)の値も変化する。αを表す式は光速Cのほかプランク定数や電子の電荷(電気素量)を含んでいるので、Cが不変でもαが変わる可能性はある。その場合は相対論には抵触しないが、やはり同じくらいのインパクトを持つ一大事となる。

 こうしたαの値の変化は、弦理論の枠組みでは起こりうる。弦理論では、余剰次元(私たちの4次元時空に付随している別の次元)の細かな構造によってαの大きさが決まる。
 現代の物理学者や天文学者は遠くのクェーサーからやってきた太古の光を調べ、大昔にはαの値が現在とわずかに異なっていた証拠をつかもうとしている。αの値が変わると、 原子やイオンが放出・吸収する光の振動数がわずかに変化する。これまでの観測では、こうした振動数シフトは見つかっていない。

 ただ、唯一の例外といえそうなのは、オーストラリアにあるニューサウスウェールズ大学のウェブらによる観測である。彼らは新しい分析手法によってデータを精密に分析し、統計的にはやや問題が残るものの、シフトの証拠を見つけたと報告した。
 しかし、一部の研究者はウェブらが分析に用いた新手法の精度は不十分で、検出された“シフト”は統計誤差にすぎないと主張していて、ウェブらの報告とは矛盾する結果である。

 というわけで、これまでのところアインシュタインはすべての挑戦者を退けている。挑戦者たちは彼がまとっている強固な鎧に生じる小さなひび割れを探し続けなければならないようである。

 この小さなひび割れ(わずかな破れ)を追って以下のような探求も進んでいる。
特殊相対性理論は物理学の理論の中で最も基本的であるとともに、裏付けの取れた理論だ。しかし、量子力学と重力などの力を統合する理論によると、相対論がわずかに破れている可能性がある。また、相対論の破れを発見しようと、数多くの実験が進められている。


 冒頭で書いたように、この「侵すべからざる原理と考えられたアインシュタインの理論」に現代物理学が挑戦を始めたのである。

 物理学のあらゆる基礎理論の中核といえるのが、1905年にアインシュタインによって定式化された特殊相対性理論である。どんな慣性系から見ても物理法則は不変である(運動の速さや方向にかかわらず、一定の速度で動く観測者から見ると物理法則は不変である)という考え方が基盤になっている。
 ここから、さまざまな効果が導き出される。中でも光速の不変性や、運動する時計では時間が遅れること、運動する物体の長さが縮むこと、質量とエネルギーが等価であること(E=mc2)は有名である。
これらの効果は高精度の実験によって現実に確かめられ、現在では実験物理学の基本的手段として当然のように使われている。例えば粒子加速器では粒子が高速で運動すると質量が増すとともに寿命が延びることが利用されているし、放射性同位体を使う実験は質量がエネルギーに転換される現象に基づいている。
 私たちの身近にある製品も相対性理論と無縁ではない。カーナビなどでおなじみの全地球測位システム(GPS)では、GPS衛星の時計と地上の時計に相対論的な効果によってズレが生じるため、これを補正する必要がある。

 だが近年になって、一部の物理学者は相対性理論が実は自然界の近似にすぎないかもしれないと考えるようになった。この考え方は、既知のあらゆる力と粒子を一つにまとめる究極の統一理論を確立しようという試みの中から生まれた。相対論のわずかな破れが見つかれば、長年にわたって追求されてきた究極理論の初の実験的な手がかりになるかもしれない。
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